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月別アーカイブ: 2025年9月

ドイ産業のよもやま話~part19~

皆さんこんにちは!

 

さて今回は

~変遷~

 

U字溝、L形擁壁、ボックスカルバート、ヒューム管…。工場で作られたコンクリート二次製品は、現場で据え付けられて初めて機能します。つまり、製品と現場をつなぐ「運搬」は、品質と工期を左右する“見えない主役”です。ここ10年余りで、運搬の世界は静かに、しかし大きく変わりました。本稿では、その変遷を現場視点で整理し、次の一手を考えます。


1|大量・長距離から「JIT・短距離多頻度」へ

かつては現場の仮置き場にまとめて搬入し、後から敷設する方式が主流でした。しかし用地制約や安全規制の強化、工程の短期化により、必要な日に必要な分だけを運ぶ**ジャスト・イン・タイム(JIT)**が一般化。

  • 施工ヤードが小さい都市現場では、半日単位の細切れ納入が当たり前に。

  • これに伴い、工場側も生産計画→運搬計画→据付計画4D(時間軸)で一体化する体制が求められています。


2|「2024年問題」と運び方の再設計

ドライバーの時間外上限規制で、長距離直送のリスクが増大。各社は次のような打ち手を進めています。

  • 中継輸送(リレー):幹線輸送とラストワンマイルを分け、休息・労務を守りつつ遅延を回避。

  • ミルクラン:複数現場を一筆書きで回るルート最適化。待機を極小化。

  • 夜間・早朝ウィンドウ:渋滞回避と騒音規制のバランスをとり、積込・荷下ろしの時限予約を徹底。

  • 待機課金の明確化:荷待ち時間を見える化し、工程側の改善インセンティブに。


3|法規・許可と“設計段階からの物流”

コンクリート製品は重量・寸法・偏荷重の制約が厳しく、特殊車両通行許可やルート選定が欠かせません。最近の潮流は、設計図面の段階で物流条件を織り込むこと。

  • 製品設計時にトラック荷台寸法・軸重・積載形状を考慮し、一台当たりの搭載効率を最大化。

  • 橋梁や狭隘路が多い地域では、分割寸法の再設計で「通れる・置ける・吊れる」を同時に満たす。

  • ルートは重量制限橋・高さ制限・季節規制を加味したデジタル台帳で管理。


4|装備の進化:車両・付帯機器・荷締め

  • 車両:低床セミトレーラ、ステアリング付き台車、短尺・多軸の選択肢が拡大。狭隘現場にはユニック(車載クレーン)やラフター併用で“置場いらず”の直据付が進む。

  • 荷締めWLL(使用荷重)明記のベルト/チェーン、エッジ保護、ノンスリップマット、テンショナのトルク管理までが標準に。

  • 吊り治具:埋設アンカー、ループ金具、真空リフタなど、製品側の吊点設計とセットで安全・スピードを両立。


5|品質は運搬中に壊れる:欠け・微細ひびの未然防止

二次製品は“硬い=壊れない”ではありません。こすれや局部応力で角欠け、微細クラックが発生します。

  • 養生日数と出荷判定:早期出荷はリスク。設計強度・含水率・表面硬度で数値判定

  • 敷材・間座:荷重分散の木角・ゴム、積層方向の統一、同一高さのスペーサで局部応力を回避。

  • 積込手順の標準化:荷台上の歩行動線・合図法をSOP化し、ヒューマンエラーを削減。


6|デジタル化:BIM/CIMとテレマティクスの“橋渡し”

  • BIM/CIM連携:製品モデル(重量・寸法・吊点)を運搬計画ソフトに連携。吊りしろ、旋回半径、据付順まで事前シミュレーション。

  • テレマティクス:位置・速度・到着予測を現場と共有し、クレーン待ちゼロを狙う。

  • 電子伝票・検収:納入個数、ロット、外観検査をタブレットで即共有。クレーム原因の切り分けが早くなる。


7|安全は“足元”から:現場条件と共同責任

  • 荷下ろし地盤:ベニヤや敷鉄板で地耐力を確保。傾斜・ぬかるみは事故の温床。

  • 合図者・ゾーニング:立入禁止エリア、吊荷の下に人を入れない原則の徹底。

  • 風・雨:長尺物は風荷重感度が高い。現場判断ではなく気象基準値で作業可否を決める。

  • 近接交通:都市現場は交通誘導・仮囲い・夜間照明をセットで計画。安全は元請・製造・運搬の三者の共同責任です。


8|環境とコスト:低炭素物流と“往復の最適化”

  • 積載効率の見直し:分割設計・パレット化で空気を運ばない

  • モーダルシフト:長距離はフェリー・鉄道コンテナとの組合せでCO₂とドライバー負担を低減。

  • 復路活用:帰り便で型枠・金具・パレットを回収する循環スキーム

  • 燃料転換:軽油の高止まりに対し、地域によっては**再生可能ディーゼル(HVO)**や将来の電動化の実証も始まっています。


9|人材の再定義:ドライバーから“ロジスティクス技士”へ

  • 製品特性・吊り荷の基礎・荷締め計算・現場コミュニケーションまでをカバーする多能工化が進行。

  • VR/動画SOPで新人立ち上げを加速し、指差し呼称・合図統一を“同じ言葉”にする。

  • ベテランの勘を数値と手順に落とし、属人的な安全を再現可能にする文化が求められています。


10|「運ぶ前」から始まっている――設計・製造との共創

運搬業は受け身ではなく、設計・製造と早期にテーブルにつくほど強くなります。

  • 設計側:分割・重量・吊点・納入順を運搬と共同で最適化。

  • 製造側:出荷判定・梱包・表示を運搬仕様に合わせ標準化。

  • 運搬側:ルート・許可・積載形状・荷下ろし動線を事前提示し、工程に組み込む。

この三者連携が、工期短縮・事故ゼロ・コスト最小化を同時に叶えます。


90日アクションプラン(現場で即効の三手)

  1. SOP整備:積込・荷締め・荷下ろしの写真つき手順書をA4三枚に集約。新人は初日30分で学び、当日実地で復唱。

  2. 4D連携:主要取引先のBIM/CIMと受け渡す製品属性テンプレ(重量・重心・吊点・外形)を統一。納入スケジュールを時間予約制に。

  3. ルート台帳:主要現場エリアの通行可否・制限情報・回避ルートをデジタル化。季節規制や工事規制の更新フローを月一で回す。


まとめ:価値は「安全・確実・遅れない」に宿る

コンクリート二次製品の運搬は、単に“点Aから点Bへ”ではありません。

  • 設計に介入し、

  • 製造と生産計画を合わせ、

  • 現場の工程と安全を同じ地図にのせる。

この“面で解く”発想に切り替えた事業者から、工期短縮とトラブルゼロ、そして低炭素・低コストの新しい競争力を手に入れています。運ぶこと自体が価値になる――それが、変わり続ける運搬業の現在地です。

 

 

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